AI活用の推進を任されたものの、誰にどこまで責任を持たせるべきか決めきれない、という声は少なくありません。これは、生成AIの活用が一部社員の試行から部門・全社利用へ広がる企業で、DX推進責任者や人事・経営企画部門が直面しやすい悩みです。以前は「まず使ってみる」段階でも進められましたが、現在は情シス、法務、人事、現場部門、経営層が、それぞれ別の観点からリスクと効果を継続的に確認する必要があります。たとえば、3か月間・5部門・50名で試行する場合、利用ルール、ツール選定、研修、問い合わせ対応、効果測定に加え、利用中のAIサービスやモデルの変更を誰が確認するかが曖昧なままだと、推進担当だけに判断が集中します。この記事では、AI推進チームを「推進・技術・意思決定」のコアチームと、「法務・人事・現場代表」の拡張チームに分け、部門間のRACIで役割を整理します。目指すのは、推進責任者が経営会議や部門長会議に、無理のない体制案として提示できる状態です。ただし、体制図を作るだけでAI活用が定着するわけではありません。運用ルール、教育、利用状況のモニタリング、定期的な見直しと組み合わせて、自社に合う形へ調整していきましょう。
AI推進チームが必要になる理由
生成AIの社内活用は、最初は個人の試行から始まることが多いものです。議事録を要約する、メール文面を整える、提案書のたたき台を作る、社内FAQの回答案を考える。こうした使い方は、比較的すぐに効果を実感しやすい領域です。
一方で、組織として活用範囲を広げようとすると、単に「便利なツールを導入する」だけでは済まなくなります。誰が利用ルールを決めるのか。入力してよい情報と、入れてはいけない情報をどう分けるのか。AIの出力を誰がレビューするのか。研修は誰が担当するのか。現場からの問い合わせはどこが受けるのか。成果はどの指標で見るのか。こうした論点が一気に増えます。
AI活用の体制設計では、利便性だけでなく、リスクを継続的に管理する仕組みが求められます。国内では、経済産業省などが公表する「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」で、AIに関わる事業者が取り組むべき考え方や実践のためのチェックリストなどが整理されています。また、NIST AI Risk Management Frameworkに加え、生成AI特有のリスクを扱うGenerative Artificial Intelligence Profile(NIST AI 600-1)やOECD.AIも公開されています。こうした枠組みを参考にしながら、自社の利用目的やリスクに応じて責任者、確認プロセス、教育、モニタリングを設計することが重要です。
つまり、AI推進はツール導入だけでなく、業務設計・権限設計・教育設計を含む取り組みです。推進担当者だけで抱えるのではなく、DX、情シス、法務、人事、現場、経営層の役割を整理する必要があります。
AI推進体制はコアチームと拡張チームに分ける
AI推進体制を考えるとき、最初から大きな委員会を作る必要はありません。むしろ、関係者を広げすぎると、会議体は立ち上がっても意思決定が遅くなることがあります。
おすすめは、日常的に動く「コアチーム」と、専門論点ごとに参加する「拡張チーム」を分けることです。
コアチームは推進・技術・意思決定の小さな母体にする
コアチームは、AI活用推進の中心になる少人数のチームです。組織規模にもよりますが、初期段階では想定例として3〜5名程度から始めると運用しやすいでしょう。
- 推進責任者
- DX部門、経営企画部門、または全社改革を担う部署が担当することが多く、AI活用の目的、対象領域、優先順位、経営報告を担います。
- 技術・セキュリティ担当
- 情シス部門や情報セキュリティ部門が該当します。ツール選定、アカウント管理、権限設定、ログ管理、既存システムとの連携可否を確認します。
- 意思決定や合意形成の担当
- 経営層や部門長との接続を担い、予算、対象範囲、リスク許容度、全社展開のタイミングを確認します。
この3つの役割をコアチームに置くことで、「何を実現したいのか」「安全に使うための条件は何か」「組織としてどこまで進めるのか」を同じ場で扱えるようになります。
拡張チームは専門観点を必要なタイミングで入れる
拡張チームは、常時すべての会議に参加する必要はありません。論点に応じて相談・レビューする関係者です。
- 法務部門
- 契約、個人情報、著作権、規程との整合性を確認します。特に、社外に出す文書、契約に関わる文書、個人情報や機密情報を含む業務では、早い段階で関与してもらう必要があります。
- 人事部門
- 研修、社内周知、職種別のスキル育成を担当します。AI活用は一部の詳しい人だけが使っても、組織全体の成果にはつながりにくいため、教育設計が重要です。
- 現場代表
- 実際の業務で使えるユースケースを見極める役割です。AI推進チームが考えた施策が、現場で本当に使えるか、現場負荷が大きすぎないかを確認します。
必要に応じて、広報、ブランド、監査、カスタマーサクセス、営業企画なども拡張チームに含めます。
小さく決める場と広く確認する場を分ける
AI推進体制でよくある失敗は、すべての関係者を同じ会議に呼んでしまうことです。これでは、議論は広がりますが、決定が進みにくくなります。
コアチームでは、週次または隔週で進捗確認と意思決定を行う。拡張チームでは、月次または論点別にレビューする。このように分けると、推進スピードとリスク確認のバランスを取りやすくなります。
たとえば、初期運用の想定例は次のとおりです。
- コアチーム会議:隔週30分
- 拡張レビュー会議:月1回60分
- 経営報告:四半期に1回
- 現場ヒアリング:PoC対象部門ごとに月1回
これは実績値ではなく、体制設計のたたき台です。組織規模、対象部門数、扱う情報の機密度に応じて調整してください。
部門別の役割分担
AI推進チームを作るときは、「誰を入れるか」だけでなく、「何を任せるか」を明確にする必要があります。ここでは、主要部門ごとの役割を整理します。
DX部門・経営企画部門の役割
DX部門や経営企画部門は、AI活用の目的と優先順位を定義する役割を担います。
AIを導入すること自体が目的になると、現場では「何のために使うのか」が曖昧になります。まずは、どの業務課題を解決したいのかを明確にする必要があります。
たとえば、次のような論点です。
- 会議後の議事録作成時間を減らしたい
- 社内問い合わせ対応を効率化したい
- 提案書作成の初稿づくりを早くしたい
- 研修コンテンツの作成負荷を下げたい
- 社内ナレッジの検索性を高めたい
DX部門は、こうした活用テーマを整理し、PoC(概念実証。小さな範囲で実用性や課題を検証する取り組み)の対象範囲を決めます。さらに、利用状況や成果を集計し、次の展開判断につなげます。
情シス部門・情報セキュリティ部門の役割
情シス部門は、AI活用の土台を支える役割です。
主な担当領域は、ツール選定、アカウント管理、権限設定、セキュリティ、ログ管理、既存システムとの連携です。AI活用を現場に広げるほど、誰がどの情報にアクセスできるかが重要になります。
確認すべき項目は、次のようなものです。
- 利用者の追加・削除フロー
- 退職者・異動者の権限変更
- 管理者権限の付与基準
- 外部連携の可否
- ログ取得・監査の要件
- 機密性の高い業務での利用制限
- 利用中のAIサービスやモデルの変更状況
- ベンダーの利用規約・データ取扱方針の変更
AI活用をスムーズに進めるには、現場が安心して使える環境を先に整えることが大切です。また、導入時の確認だけで終わらせず、利用中のAIサービスやモデル、利用規約、データ取扱方針などの変更を継続的に確認し、必要に応じて権限や利用条件を見直す運用も必要です。
ツール選定では、Microsoft 365、Google Workspace、各種生成AIサービス、社内ナレッジ検索ツールなど、複数の選択肢があります。Kanataを利用する場合は、スペース、プロジェクト、アプリ、ライブラリという単位で利用者・データ・機能を整理でき、プロジェクトごとにメンバーや権限を管理できる点が特徴です。部門や用途ごとに情報を分けたい場合は、この構造を権限設計とあわせて検討できます。
法務部門の役割
法務部門は、AI活用の「してよいこと」と「してはいけないこと」を整理する役割です。
特に重要なのは、入力情報の扱いです。公開情報、社内一般情報、顧客情報、個人情報、未公開財務情報、契約情報などは、同じように扱うことはできません。
日本の個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関して、個人情報を適正に取り扱う必要があることを注意喚起しています。また、法律・規制・契約に関わるAI出力は、社内の法務部門や専門家が確認する運用にしておくのが現実的です。EU域内でAIを提供・利用する事業がある場合は、EU AI Actの適用状況も確認する必要があります。AIリテラシーに関する規定などはすでに適用されており、2026年8月2日からは透明性に関する義務なども適用されています。一方、高リスクAIに関する一部の規定には、2027年以降の適用時期が設定されています。
法務部門が関与すべき論点は、次のとおりです。
- 入力禁止情報の定義
- 個人情報や機微情報の扱い
- 契約書や顧客資料を扱う場合の条件
- AI出力の著作権・引用・二次利用
- 社外提出物にAIを使う場合のレビュー基準
- 利用規程や社内ガイドラインとの整合
- 利用中のAIサービスやモデル、利用規約の変更時の再確認
法務部門の関与が遅れると、PoC後にルールを作り直すことになりかねません。AI推進の初期段階から、最低限の禁止事項と相談基準を決めておくことが重要です。
人事部門の役割
人事部門は、AI活用を一部の人だけの取り組みにしないための役割を担います。
AIツールを導入しても、社員が使い方を知らなければ定着しません。また、使う人によって理解度に差があると、出力品質やリスク認識にもばらつきが出ます。
人事部門が担うべき領域は、次のようなものです。
- 全社員向けの基礎研修
- 管理職向けの活用研修
- 職種別ユースケース研修
- 利用ガイドラインの周知
- 新入社員・異動者向けオンボーディング
- AI活用スキルの評価・育成方針
研修コンテンツは、動画、eラーニング、社内勉強会、オンデマンド教材など、複数の形式が考えられます。Kanataを利用する場合は、AIチャット、AI要約、eラーニングなどを組み合わせ、動画を起点に教材を作成・配信する運用も検討できます。ただし、研修コンテンツを作るだけでは十分ではありません。受講後に実務で試し、疑問を拾い、ルールを更新する流れが必要です。
現場代表の役割
現場代表は、AI活用を実務に接続する役割です。
推進チームや情シス部門だけで考えた施策は、どうしても管理側の視点に寄りやすくなります。しかし、実際にAIを使うのは現場の社員です。
現場代表が確認すべきなのは、次のような点です。
- そのユースケースは本当に頻度が高いか
- AIを使うことで作業が増えないか
- 出力を確認する負担は現実的か
- 現場で使う言葉や形式に合っているか
- 例外ケースが多すぎないか
- 成果が出た場合、横展開できそうか
現場代表は、単なる利用者ではなく、AI推進チームにとっての検証者です。早い段階で巻き込むことで、机上の体制設計にとどまりにくくなります。
RACIで責任分担を見える化する
AI推進チームを作るときは、役割分担を文章で説明するだけでなく、RACIで整理すると合意しやすくなります。
RACIとは、業務や意思決定に対して、関係者の責任を4つに分ける方法です。
- R:Responsible
- 実行責任
- A:Accountable
- 最終責任
- C:Consulted
- 相談先
- I:Informed
- 共有先
ポイントは、「関わる人」を増やすことではなく、「誰が最終的に決めるか」を明確にすることです。
AI推進のRACI想定例
以下は、AI推進体制を設計する際の想定例です。実績値ではなく、社内提案のたたき台として調整してください。
| タスク | DX推進 | 情シス | 法務 | 人事 | 現場代表 | 経営層 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AI活用方針の策定 | R | C | C | C | C | A |
| 対象ユースケースの選定 | A/R | C | C | C | R | I |
| ツール選定 | C | R | C | I | C | A |
| アカウント・権限設計 | C | A/R | I | I | I | I |
| 利用ガイドライン作成 | R | C | A/R | C | C | I |
| 禁止情報・機密区分の定義 | C | C | A/R | C | I | I |
| 社員研修の設計 | C | I | C | A/R | C | I |
| PoC運用 | A/R | R | C | C | R | I |
| 効果測定 | A/R | C | I | C | R | I |
| 社外提出物のレビュー基準 | C | I | A/R | I | C | I |
| インシデント対応 | C | R | A/R | C | I | I |
| AIサービス・モデルの変更管理 | A/R | R | C | I | I | I |
| AI利用状況・リスクの定期レビュー | A/R | R | C | C | R | I |
| AIインベントリの管理 | A/R | R | C | I | R | I |
この表を作ると、たとえば「利用ガイドラインはDXが原案を作り、法務が最終責任を持つ」「研修は人事が責任を持つが、内容はDXや現場代表と相談する」といった関係が見えるようになります。
RACIで決めすぎないほうがよいこと
一方で、RACIは細かく決めすぎると運用が重くなります。
日々のプロンプト改善、個人の業務メモ整理、部門内の小さな活用アイデアまでRACIに落とす必要はありません。すべてを承認制にすると、現場の試行錯誤が止まってしまいます。
RACIで明確にすべきなのは、リスクや影響範囲が大きい領域です。
- 機密情報を扱う業務
- 社外に出す文書
- 契約・法務に関わる出力
- 全社展開するガイドライン
- 研修や評価に関わる方針
- ツールや権限の設計
日常的な小さな改善は現場に任せ、影響の大きい判断はRACIで責任を明確にする。このバランスが重要です。
最初の90日間で進めるチーム組成ステップ
AI推進チームは、最初から完成形を目指す必要はありません。90日程度の区切りで、体制と運用を試しながら整えるほうが現実的です。
目的とコアチームを決める
最初に決めるべきなのは、AI活用の目的です。
「全社でAIを使う」だけでは広すぎます。まずは、どの業務課題を対象にするのかを絞ります。
想定例としては、次のようなテーマです。
- 会議後の議事録作成を効率化する
- 社内問い合わせ対応を減らす
- 営業資料の初稿作成を早くする
- 研修コンテンツの作成負荷を下げる
- 社内ナレッジを検索しやすくする
目的を決めたら、推進責任者、情シス担当、意思決定や合意形成の担当を置きます。この段階では、全社の関係者をすべて集める必要はありません。まずは小さなコアチームを作り、論点を整理します。すでに部門や個人で生成AIが利用されている場合は、誰が、どのAIサービスを、どの業務で利用しているかを棚卸しし、AIインベントリとして把握しておくと、その後のルール設計やリスク確認につなげやすくなります。
利用ガイドラインと禁止事項を決める
次に、最低限の利用ガイドラインを作ります。
ここで重要なのは、最初から完璧な規程を作ろうとしないことです。まずは、社員が迷いやすいポイントを明文化します。
- 入力してよい情報
- 入力してはいけない情報
- 個人情報のマスキング方法
- 社外提出前のレビュー基準
- AI出力をそのまま使ってはいけない領域
- 判断に迷った場合の相談先
この段階で法務と情シスを巻き込み、「禁止」と「要相談」を明確にしておくと、後の展開が進めやすくなります。
ユースケースを3つに絞って試す
AI活用の初期段階では、ユースケースを広げすぎないことが重要です。まずは、頻度が高く、効果を実感しやすく、リスクを管理しやすい業務を選びます。
想定例としては、次の3つです。
- 議事録要約です。会議録音やメモをもとに、決定事項、TODO、議論の要点を整理します。
- 社内FAQです。人事・総務・情シスへの定型問い合わせを、規程やマニュアルに基づいて回答できるようにします。
- 提案書や報告書の初稿作成です。白紙から書く負担を減らし、人が内容確認と編集に集中できるようにします。
ツールは、既存のグループウェア、汎用生成AI、ナレッジ管理システム、AI活用支援プラットフォームなどから選べます。Kanataを使う場合は、プロジェクト単位でAIチャット、AI要約、eラーニングを分け、プロンプトや学習データをライブラリで管理する運用が検討できます。
効果測定と次フェーズ判断を行う
PoCが終わったら、利用実績と現場の反応を確認します。
見るべき指標は、単に利用回数だけではありません。次のような観点で確認します。
- 利用者数
- 継続利用率
- 対象業務の作業時間
- 出力のレビュー負荷
- 問い合わせ件数
- 現場の満足度
- リスク・ヒヤリハットの発生有無
- 横展開できそうな部門
- 利用中のAIサービス・モデルの変更状況
- ベンダーの利用規約・データ取扱方針の変更
- 誤回答・不適切出力・情報漏えいなどのインシデント
- AI利用による業務品質への影響
- 利用停止・モデル切替が必要になった場合の代替手段
たとえば、3か月間・5部門・50名で試行した場合、月次で「利用回数」「対象業務の作業時間」「レビューで修正が必要だった割合」を確認する、といった設計が考えられます。
ここでも、実績がない数値を成果として書かないことが大切です。社内提案資料では、「想定例」「目標値」「実績値」を分けて記載しましょう。また、PoC後も定期的に利用状況とリスクを確認し、AIサービスやモデル、利用規約などの変更に応じてガイドラインや運用を見直すことが重要です。
よくある失敗と回避策
AI推進チームづくりでは、よく似た失敗が起こります。代表的なものを整理します。
情シスだけに任せてしまう
AIツールの導入は情シスが主導しやすい領域です。しかし、情シスだけで進めると、セキュリティやアカウント設計は整っても、現場の業務課題に合わないことがあります。
回避策は、ツール選定の段階からDX部門と現場代表を入れることです。何を実現したいのかを明確にしたうえで、必要な機能や制約を整理します。
DX部門だけで進めてしまう
逆に、DX部門だけで進めると、活用テーマは出てきても、情報管理や法務確認が後追いになることがあります。
とくに、顧客情報、契約情報、個人情報を扱う可能性がある場合、法務や情シスの確認が遅れると、PoC後に運用を止めざるを得ないこともあります。
回避策は、初期段階で「禁止情報」「要相談情報」「社外提出前レビュー」の3つだけでも決めておくことです。
法務確認を最後に回してしまう
法務確認を最後に回すと、「現場ではもう使い始めているが、ルール上は問題がある」という状態になりやすくなります。
法務部門は、AI活用を止めるために入るのではありません。安全に広げるための前提を整える役割です。
早い段階で相談し、最初からすべてを禁止するのではなく、「どの条件なら使えるか」を一緒に整理しましょう。
人事・研修を巻き込まない
AI活用は、詳しい人だけが使う状態では広がりません。特に、現場社員のスキル差が大きい場合、利用ルールやプロンプトの書き方が人によってばらつきます。
回避策は、人事部門と一緒に、基礎研修、職種別研修、管理職向け研修を分けて設計することです。最初から高度な使い方を教える必要はありません。まずは、入力してはいけない情報、出力の確認方法、よく使う業務テンプレートから始めるのが現実的です。
現場代表がいない
推進チームに現場代表がいないと、体制図は整っていても、実務に合わない施策になりがちです。
たとえば、議事録要約のテンプレートを作っても、実際の会議体に合っていなければ使われません。社内FAQを作っても、現場が使う言葉で検索できなければ定着しません。
回避策は、PoC対象部門から1〜2名の現場代表を入れ、テンプレートや運用ルールを一緒に検証することです。
まとめ
AI推進チームづくりで最も大切なのは、すべての役割を完璧に決めることではありません。最初に決めるべきなのは、次の3つです。
- 推進の最終責任者は誰か
- 技術・セキュリティの判断者は誰か
- 法務・人事・現場へ相談する基準は何か
この3つが曖昧なままだと、AI活用は「やる気のある人」に依存します。逆に、この3つが決まっていれば、最初のユースケースは小さくても、次の展開判断がしやすくなります。
AI推進チームは、AIに詳しい人だけで作るものではありません。業務を変える人、安全に使う条件を整える人、社員に伝える人、現場で検証する人が、それぞれの責任を持つことで機能します。
まずは、コアチームと拡張チームを分け、RACIで責任を見える化する。そのうえで、最初の90日間で小さく試し、ガイドラインと運用を見直す。この順番で進めることで、推進責任者は「AIを使いましょう」ではなく、「この体制なら安全に始められます」と提案しやすくなります。
Q&A
AI推進チームは何人から始めるのがよいですか?
初期段階では、想定例として3〜5名程度のコアチームから始めると運用しやすいです。推進責任者、情シス・セキュリティ担当、経営や部門長との合意形成を担う担当者を置き、必要に応じて法務、人事、現場代表に参加してもらう形が現実的です。
AI推進はDX部門と情シス部門のどちらが主導すべきですか?
どちらか一方だけで進めるより、役割を分けるほうが安全です。DX部門は活用目的やユースケースの選定を担い、情シス部門はツール、権限、セキュリティ、ログ管理を担います。最終的には、経営層や部門長が関与する判断事項も出てくるため、RACIで責任分担を明確にしておくと合意しやすくなります。
法務部門はどのタイミングで巻き込むべきですか?
利用ガイドラインや禁止情報を決める初期段階で巻き込むのが望ましいです。特に、個人情報、顧客情報、契約情報、著作権、社外提出物に関わる使い方を想定している場合は、PoC前に相談基準を決めておくと、後から運用を作り直すリスクを減らせます。
最初に選ぶAI活用テーマは何がよいですか?
最初は、頻度が高く、効果を確認しやすく、リスクを管理しやすい業務が向いています。たとえば、議事録要約、社内FAQ、提案書や報告書の初稿作成などです。ただし、顧客情報や個人情報を扱う場合は、マスキングやレビューのルールを先に決めてください。
RACIを作ればAI活用は定着しますか?
RACIは責任分担を見える化するための道具であり、それだけで定着するわけではありません。実際には、利用ガイドライン、研修、現場フィードバック、効果測定、定期的な見直しが必要です。RACIは、誰が決めるのか、誰に相談するのかを明確にするための土台として使うと効果的です。