その資料、誰が最初に開きますか?
ある朝、所管省庁から改正法の概要資料が公表されました。PDFで数十ページ。総務部で法務を兼務する社員が、まずそれを開きます。
印刷して線を引きながら読み進め、「ここは自社に関係しそうだ」「この条項は現行の社内規程と食い違う」と拾っていく。読み終える頃には夕方で、そこから経営会議用のメモを書き起こし、関係部門へ共有します。
翌週、別の部門から「あの改正、うちの契約書の雛形も直すんですか?」と質問が来ます。資料をもう一度開いて該当箇所を探し直します。
長文資料の読み込みは、時間がかかる上に、読んだ結果が読んだ人の中にしか残らないことが厄介です。次に同じ資料を触る人は、また最初から読むことになります。
この記事では、法改正やガイドラインの資料を「一人が読み切る作業」から「同じ型で要点を抜き、チームに残る形にする作業」に変える手順を、KanataのAI要約で3ステップに分けて紹介します。
長文資料が「読んだ人のもの」で終わる3つの理由
時間をかけているのに資産にならないのは、読み方の設計がないまま、その都度の判断で処理しているからです。
理由1:資料ごとに読み方が変わり、型が残らない
改正法の概要資料、パブリックコメントの結果、業界団体のガイドライン、Q&A集。形式も分量もばらばらな資料が、ばらばらに届きます。
そのたびに「今回は何を拾うべきか」をゼロから考えるので、読み方が資料ごとに変わります。前回うまくいった整理の仕方も、記録されていないため次に活かせません。読む技術は毎回作り直され、毎回捨てられています。
理由2:要点の粒度が人によって違う
担当者が複数いると、別の問題が起きます。Aさんは条文単位で細かく拾い、Bさんは「要するに何が変わるか」を3行にまとめる。どちらも間違いではありませんが、粒度が揃わないため読み比べられません。結果として「この資料はAさんが見たやつだから、Aさんに聞こう」となる。資料ではなく人が窓口になるわけです。
理由3:読んだ結果が散り、次に再利用できない
要点メモは、メールの本文、チャットの投稿、共有フォルダのWordファイル、会議資料の1ページと、都合で置き場所が変わります。半年後に「あの改正のとき、どう整理したんだっけ」と探しても、どこに何があるか分かりません。探すより聞いたほうが早いので、また担当者に質問が向かう。これが引き継ぎのときに一気に表面化します。
解決の型:入口・抜き方・置き場を先に決める
3つの原因は、裏返すとそのまま解決の型になります。
- 入口を1つにする:どんな形式の資料でも、同じ入口から投入する
- 抜き方を先に決めておく:読む前に「この項目を抜く」と決め、その指示を記録しておく
- 置き場をあらかじめ決める:出した要点の保存先を作業前に決め、毎回そこに積む
ポイントは、この3つを担当者の心がけではなく、道具の設定として持つことです。抜き方が道具側に登録されていれば、崩れようがありません。
「読む」を個人技から外せるのがKanataです
Kanataは、人材育成・現場での実務対応・業務自動化の3つを支える法人向けの生成AI活用プラットフォームです。今回の話は、このうち現場での実務対応。「AI要約」というアプリが、先ほどの3つの型にそのまま対応しています。
型1:入口が1つにまとまっています。
AI要約の入力方法は、ドキュメント/画像/音声/URL/テキストの5種類。省庁が公開したPDFでも、Webで公表された通達でも、紙の資料を撮った画像でも、同じ画面から投入できます。形式ごとにツールを使い分ける必要がありません。
型2:抜き方をテンプレートとして登録できます。
Kanataのプロジェクトライブラリには、プロンプト(AIに与える指示文)を登録しておけます。「法改正資料からこの4項目を抜く」という指示を一度作れば、次回からは呼び出すだけ。これが個人のメモではなくプロジェクトの持ち物になるところが、Kanataの肝です。
型3:出した要点の置き場が用意されています。
生成した要約は「あなたの要約」という履歴に残るほか、学習データ(AIに参照させる自社資料を管理するライブラリ)として保存できます。要約が成果物で終わらず、次にAIが答えるための材料になります。
アプリで生まれた成果物をライブラリに蓄積し、蓄積したものをアプリで再利用する。この循環がKanataの設計思想です。法改正対応に当てはめれば、今回読んだ結果が次回の土台になり、担当者が代わっても引き継ぎが「説明」から「参照」へ変わっていきます。
社内から寄せられる問い合わせに答える側は、Kanataで社内問合せの一次回答づくりと対応の標準化ガイドで扱っています。
【実践】法改正資料の読み込みを3ステップに
想定例として、法務を兼務する総務担当者が、公表されたばかりの改正法の概要資料を整理する場面で見ていきます。
ステップ1:資料を入れる(ドキュメントとURLの使い分け)
サイドバーの + 新規アプリ から「AI要約」を選び、「アプリ作成」をクリック。アプリ名と概要を入力して「作成」を押せば完成です。アプリ名は「法改正・ガイドライン整理」のように、中身が分かる名前にします。
AI要約アプリを開くと、入力方法のタブが並んでいます。
| 資料の状態 | 使う入力 | 補足 |
| PDFをダウンロード済みで10MB以内 | ドキュメント | 対応形式はCSV・PDF・PowerPoint・Word・Excel |
| 省庁サイトで公表されていてファイルが大きい | URL | ページのURLを貼る |
| 資料の一部で足りる/紙しかない | テキスト・画像 | 該当箇所を貼る、撮影した画像を入れる |
ドキュメント入力の上限は10MBです。官公庁の資料は図表が多く、超えることが珍しくありません。その場合はURL入力に切り替えます。上限や対応形式は入力画面の案内が正です。
今回はPDFをアップロードします。
ステップ2:「何を抜くか」を先に決める
資料を入れたら生成方法を選びます。
選べるのは「自動生成」と「カスタム生成」。全体像をつかむだけなら自動生成で足りますが、法改正資料では 「カスタム生成」がおすすめです。カスタム生成では、登録済みのプロンプトを呼び出して、カスタム指示として使用することも可能です。
下は法改正資料向けの指示文の想定例です。そのまま使えます。
あなたは社内の法務・総務担当者向けに、法改正資料の要点を整理する担当です。
入力された資料に記載されている内容だけを根拠に、次の4項目で整理してください。
- 今回の改正点(何がどう変わるかが分かる書き方で。最大5件)
- 施行日・適用開始時期(経過措置があれば併記する)
- 自社で対応が必要になりそうな条項(条番号と、何をしなければならないか)
- 確認先(この論点は社内のどの部門、または外部の専門家に確認すべきか)
制約:
– 資料に記載がないことは書かず、「資料に記載なし」と明記してください
– 法的な解釈の断定はせず、判断が必要な箇所は「要確認」と書いてください
– 各項目は箇条書きにし、1項目あたり100字以内にしてください
意図的に入れている要素が3つあります。
- 4項目を固定:誰が実行しても同じ4項目が返り、担当者による粒度の違いが消えます
- 「資料に記載がないことは書かない」:AIが一般論で埋めると、資料にない内容が混ざります。法改正の整理で一番避けたい事故です
- 「確認先」を項目に入れる:AIに結論を出させず、人が判断すべき論点を洗い出させる構成にしています
指示文が固まったら、カスタム生成から登録します。
| 項目 | 入力内容 |
| タイトル | 法改正資料の要点抽出(4項目) |
| プロンプト概要 | 改正法・ガイドライン資料から、改正点・施行日・対応要否・確認先を抜き出す |
| プロンプト本文 | 上記の指示文 |
| 公開設定 | 公開(プロジェクト内に公開) |
公開設定は必ず「公開」に。「プライベート(自分用)」だと、結局その人だけの技になります。「作成」を押すと一覧にカード表示され、次回からはカスタム生成でこれを指定するだけです。
この「型をライブラリに置いてチームで揃える」考え方は会議の議事録でも同じように使えます。詳しくはMTG議事録を”資産”に変えるKanata活用術をご覧ください。
ステップ3:出した要点を残して配る
「要約を生成」をクリックすると要約が表示され、左側の「あなたの要約」に履歴が保存されます。
要約結果の左下には「コピー」「共有URLをコピー」「学習データに保存」が、その下に「内容を修正する」「チャットへ」のボタンが並びます。
大事なのは、生成された要約をそのまま信用しないこと。「内容を修正する」で担当者が目を通し、資料と突き合わせて直します。この一手間で、社内に出せる品質かどうかが決まります。
確認が済んだら 「学習データに保存」 を押します。ダイアログで次を入力・選択し、「作成」をクリックします。
| 項目 | 想定例 |
| データ名 | 20260914_情報管理法改正_概要要点 |
| データ種別 | ドキュメント |
| フォルダ | 法改正対応_2026 |
| データ本文 | 生成された要約(手直し可) |
想定例のフォルダ設計です。改正ごとではなく年度と領域で切るのがコツです。
| フォルダ名 | 入れるもの | |
| 法改正対応_2026 | その年度に対応した改正の要点データ | |
| ガイドライン_業界団体 | 業界団体・所管省庁のガイドライン要点 | |
| 社内規程_現行 | 現行の社内規程本文(改正との突き合わせ用) |
3つ目が効きます。改正の要点と現行規程が同じライブラリに並ぶと、「どの規程を直す必要があるか」をAIに突き合わせさせる下地ができます。
ステップ4(発展):要約した資料に、あとから質問する
要点が型どおりに抜かれ、チームから参照できる場所に残りました。最後に、後から質問できる状態を作ります。
手早くやるなら「チャットへ」を押せば、その要約を元にAIチャットアプリの設定画面が開きます。
必要項目を入力し、「作成」を押せば、「第3条の経過措置はいつまでですか」とその場で聞くことができます。
| 設定項目 | 入力・選択する内容 |
| アプリ名 | 法改正照会デスク |
| アプリ概要 | 保存済みの法改正要点と社内規程にもとづいて一次回答する |
| AI設定 | 法務照会アシスタント(AIライブラリから選択) |
| 学習データの参照 | 設定する(フォルダ「法改正対応_2026」を指定) |
| 学習データの取り扱いについて | 提供情報のみ(クローズド) |
| プロンプト設定 | 法改正資料の要点抽出(4項目) ほか |
| AIへの指示 | 法的な解釈の断定は行わず、判断が必要な論点は確認先部門を案内すること |
重要なのは「学習データの取り扱いについて」です。 AIが何を根拠に答えるかを「提供情報のみ(クローズド)」「一般知識で補完可(社内優先)」「公開情報も参照可(出典必須)」の3段階から選びます。
今回は 「提供情報のみ(クローズド)」 を選びます。与えた資料だけを根拠に回答し、一般知識で補完せず、足りなければ質問するか「不明」と返します。保存した要点と社内規程に書いていないことは答えないAIになります。一般的なチャット型のAIツールでは一般論で埋まるかが使う側の書き方次第ですが、Kanataではこれが設定項目です。
まとめ:まずは手元の1本から
入口を1つにし、抜き方をプロンプトとして登録し、結果を学習データとして残す。この3つが揃うと、法改正資料の読み込みは担当者個人の作業から、チームに積み上がる業務に変わります。
今週やるべきは、
- 直近に届いた改正資料を1本選び、AI要約のドキュメント入力に通す
- カスタム生成で4項目の指示文を試し、出力を見て言い回しを調整する
- 調整後の指示文を「+ 新しいプロンプト」で登録し、公開設定を「公開」にする
重要なのは3番目。使った指示文を登録するところまでやって初めて、次回の自分と次の担当者に引き継がれます。
同じ考え方を営業の後工程に応用した例は、Kanataで営業の事務作業を削減する方法で紹介しています。ぜひご覧ください。
よくある質問
- 過去に対応した改正分を、後からまとめて積めますか。
積めます。学習データは「+ 新規作成」からデータを作成するほか、手元のファイルのインポートやドラッグ&ドロップにも対応しています。過去分をフォルダにまとめておけば、フォルダ単位でAIに紐付けられます。